「老後も取り崩しながら運用? もちろんそのつもりです!」 「過去データを見れば、現金化するより運用し続けた方が正解なんですよね?」
投資の勉強を熱心にしている人ほど、こう自信満々に答えます。 確かに、Excelで計算した数学的な確率論で言えば、それが100点満点の正解です。しかし、そこには人間の心(恐怖)という変数が計算に入っていません。
私たち人間は、計算通りに動くロボットではありません。確かに、毎月の給料が入ってくる現役時代であれば、暴落はバーゲンセールであり、さほど恐れる必要はありません。だからこそ、今はリスクを取ってNISA(やiDeCo)で「オルカン」を全力で積み立ててOKです。
しかし、給料がなくなった老後においては話が別です。 取り崩し期に食らう暴落は、回復を待てる余裕がないため、命が削られるような恐怖に変わるからです。
この記事では、多くのインフルエンサーが語らない老後のメンタル管理と、暴落時に心を壊さないための守りのポートフォリオについて解説します。
理論上の正解は「死ぬまで世界株式」だが…
まず、教科書的な正解を確認しておきましょう。 多くの投資本やFPが言う通り、理論的に最も資産寿命を延ばす方法は、以下の通りです。
「老後もリスク資産(株式)を多く持ち、運用益を得ながら少しずつ取り崩す」
資産を運用するのに世界株式インデックスが優れている背景については、以下の記事にて解説を行なっております。

現金で持っておくよりも、株式で運用して年率3〜5%でも増やしながら使った方が、お金は長持ちします。これは計算上、間違いありません。 しかし、この理論にはある重大な前提条件が抜けています。
それは、投資家が「どんな暴落が来ても『鋼のメンタル』で耐え続けられるなら」という条件です。
【地獄のシナリオ】年金生活での暴落は耐えられない
想像してみてください。あなたは65歳で退職し、3,000万円の老後資金(全額オルカン)を持っています。 給料はなくなり、毎月この資産を取り崩して生活しています。
そんなある年に、「◯◯ショック」のような大暴落が起き、世界株インデックスの大暴落が始まり、40%下落しました。

現役時代と老後の決定的な違い
【現役時代(今)】
「暴落だ! バーゲンセールだ! 給料が入ったら安く買い増ししよう!」 → 収入があるから、ポジティブに捉えられる。
【老後(出口)】
「3,000万円あったハズの老後資金が、今や1,800万円に…。しかも毎月生活費でさらに減っていく」 こうなると、理屈など吹き飛びます。 「これ以上減る前に、残ったお金だけでも守らなきゃ!」 本能がそう叫び、一番株価が下がっている底値ですべてを売却してしまう。
これを専門用語でシーケンス・オブ・リターン・リスクと呼びますが、もっと簡単に言えば「引退直後の不運は、致命傷になる」ということです。
なぜなら、株価の下落と生活費の取り崩しのダブルパンチを食らうからです。 資産が大幅に減っている時に、さらにそこから生活費を引き出す行為。これは、出血している傷口を自分でさらに広げるようなものです。
一度この負のサイクルに入ると、その後で相場が回復しても、あなたの資産はもう元には戻りません。 現役時代なら「待てば戻る」ですみますが、資産を取り崩している老後においては、たった一度の暴落が資産寿命を一気に10年も縮める致命傷になり得るのです。
期待値を捨ててでも「心の平安」を買う
では、どうすればいいのでしょうか? 答えは、理論上の正解(効率)を捨ててでも、精神的な正解(心の平安)を選ぶことです。

老後の投資において最も大切なのは、資産を最大化することではありません。死ぬまでお金の不安を感じずに、安心して暮らすことです。
そのためなら、多少リターン(儲け)が減ったとしても、暴落時のショックを和らげるポートフォリオ(資産配分)に変えるべきです。
具体的な「守り」の例
では、具体的にどうすればいいのか。教育資金デザインラボの推奨はシンプルです。
資産の半分、あるいは「生活費の5年分」を現金(又は流動性の高い債券)で確保しておいてください。
- 株式(オルカン): 50%
- 現金・債券: 50%
「オルカン100%より儲からないじゃん」と思うかもしれません。その通りです。でも、老後はそれでいいのです。現金比率を高める意味は、単なる気休めではありません。 暴落が来ても、株を売らずに、手元の現金だけで5年は暮らせるという状態を作ることです。
5年あれば、大抵の暴落相場は回復します。現金は、嵐が過ぎ去るのをじっと待つためのシェルターの役割を果たしてくれるのです。これ以上のリターンはありません。
結論:その時が来たら再設計しよう
ここまで怖い話をしましたが、30代・40代のあなたが今すぐ守りの姿勢に入る必要はありません。 今は給料という最強の入金力がありますから、現役時代は「オルカン」で攻めて資産を増やす時期です。
重要なのは、これから20年後、30年後にあなたが引退のフェーズ(出口)に近づいた時、 「そろそろ『攻め』から『守り』に切り替えなきゃな」 と思い出すことです。
一人で決めるのが怖ければ、専門家を頼れ

ただ、長年染み付いた「増やさなきゃ」という思考を、自分一人で「守り」に切り替えるのは意外と難しいものです。 また、その時の相場環境や家族状況によって、ベストな「守り方」は変わります。
もし、50代・60代になって、 「そろそろ出口戦略を考えたいけど、どう配分を変えればいいか分からない」 「暴落が怖くて夜も眠れない」
そう思ったら、その時は迷わずあなたが信頼できる専門家に相談してください。
念の為ですが、相談をしたいからといって、銀行員や証券マンに相談するのは本当に危険です。彼らはあなたの資産を守るプロではなく、手数料を奪うプロです。 彼らの手口については、以下の記事で暴露していますので、特に注意してください。本当に相談するなら、商品を売らない中立的なFP(有料相談)などを探すのが良いでしょう。

今回の記事で、暴落から資産を守るためのメンタル防衛術はお伝えしました。 これで、マーケット(市場)という敵に対してはこれで万全です。しかし、あなたの退職金を狙っているのは、相場だけではありません。 本当に怖いのは、笑顔で近づいてくる「人間」です。 次の記事では、退職した瞬間に狙われる「VIP待遇」という名の罠について警告します。

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