教育資金デザインラボでは、都内で中学受験を経験した33世帯の先輩家庭に、生活費の推移をアンケート調査(ヒアリング)しました。
これから「0〜6歳編」「小学生編」「中学生編」「高校生編」と、年代別のリアルなコストを公開していきますが、その前に正直に告白しなければならないことがあります。
それは、集まったデータの多くが、正確な金額ではなく予想を含んでいるという事実です。
「食費はこれくらい…かな?」「夫の小遣いや付き合いの費用は、正確には分かりません(多分これくらい)」
本来、統計データとしては欠陥かもしれません。しかし、これが現実であり、これこそが教育資金を確保する家庭の一番の問題でもあると思われます。
なぜ、高年収の家庭が、自分の家の支出を把握できていないのか?この記事では、教育費破綻の真犯人である家計の使途不明金について解説します。
高年収家庭を内側から蝕むものの正体
結論から言います。 今回のアンケートで正確な数字が出せなかった原因、そして高年収家庭が将来破綻する最大の原因。それは、使途不明金(見えない支出)の存在です。
家計簿に載らない出費の積み重ね
使途不明金とは、家計簿の項目には現れない、以下のような支出のことです。
- 夫側: 部下とのランチ、付き合いの飲み代、趣味のガジェット、スマホゲームへの課金。
- 妻側: ママ友とのランチ、子供服(セール品)、デパコス。
一つ一つは数千円〜1万円程度です。高年収のパワーカップルなら「痛くも痒くもない金額」でしょう。 しかし、これが積み重なると、年間で見れば数十万〜100万円単位で資産を食い荒らしています。
家には立派な家具があり、子供は良い服を着ている。生活水準は立派なのに、それを支える柱(貯蓄)がスカスカになっている。これが使途不明金の恐怖です。
夫婦別財布がブラックボックスを作る
なぜ、これほどまでに支出が見えなくなるのでしょうか? その主な原因となっているのが、共働き世帯に多い夫婦別財布です。
「相手が貯めているだろう」という正常性バイアス
多くの家庭が、以下のようなパターンに陥っています。
- 分担ルール: 夫が家賃、妻が食費。残りはそれぞれで管理。
- ブラックボックス化: お互いの「残り(可処分所得)」がいくらか、何に使っているか干渉しない。
- 悲劇の結末:
- 夫:「妻は堅実だから、教育費くらい貯めているだろう」
- 妻:「夫は高収入だから、いざとなれば貯金があるはず」
現実:どちらも「あるだけ使っていた」ため、貯蓄はほとんど無し。
今回のアンケートでも、「回答した数値は予想値(相手の支出は不明のため)」というケースが多発しました。これは単なる記入漏れではありません。家計が把握できていないという、高年収世帯特有のリスクそのものです。
金融資産を把握できていない恐怖
さらに恐ろしいのが、毎月の収支を把握していない家庭は、往々にして家庭の金融資産も把握できていないということです。
「うちは都内のマンションを持っているから大丈夫」と思っていても、教育費は現金一括払いが基本です。明日払う入学金のために、家を売るわけにはいきません。 夫婦別財布でブラックボックスを作っている家庭は、いざという時に動かせる現金(金融資産)がいくらあるのかすら分かっていないケースが非常に多いのです。これでは、教育費の計画など立てようがありません。

【重要】「どんぶり勘定」が許されるのは富裕層だけ
ここで、少し厳しいことをお伝えしなければなりません。
「細かいことは気にしなくても、なんとかなるでしょ」「夫婦で働いているんだから、そこまで管理しなくても大丈夫」
そう思っている方もいるかもしれません。しかし、はっきり申し上げます。「家計を把握していなくても問題ない」のは、既に教育資金が十分に準備できている富裕層だけです。
- 既に資産が数千万円ある。
- 祖父母から孫一人につき1,500万円の教育資金贈与を受けている。
このような家庭であれば、夫婦別財布で何に使おうが、どんぶり勘定であろうが、全く問題ありません。ゴールに到達しているからです。
しかし、そうではないこれから資産を作らなければならない一般の高年収家庭がその状態にあるのは、極めて危険な状態です。これから1人1,200万円という巨額の資金を作ろうとしているのに、足元のバケツに空いた穴(使途不明金)を放置している。これでは、いくら収入が高くてもゴールには辿り着けません。
1円単位の管理は不要。「トレンド」を見ろ
まず、大前提として一つだけ。 「今、家全体でいくら持っているか(金融資産)」だけは、必ず把握してください。
銀行預金、証券口座の評価額など、現金化できる資産の合計額です。ここには、自宅マンションの価値(含み益)は絶対に入れてはいけません。教育費は現金勝負だからです。 ブラックボックスを開け、まずは金融資産の総量を確定させること。これだけは最優先事項として必ず実行してください。
その上で、これからの日々の家計管理の話をします。ここで皆さんに「今日からレシートを1円単位で管理しろ」と言うつもりはありません。忙しい共働き家庭において、完璧な家計簿など継続不可能だからです。
大事なのは絶対額の正確さではなく、トレンド(変化の波)を把握することです。
- 「今は月5万の食費が、中学生になると1.5倍になる」
- 「子供たちが中学生・高校生の間は、今より出費が毎月XX万円も増えそうだ」
この物理的な支出の増加(波)だけは、子育て世帯であればどの家庭にも平等に襲いかかります。 この波の大きさを知り、それに耐えうる家計体質になっているかを確認することが、当サイトのシミュレーションの目的です。
結論:本サイトのデータの読み方
これから続く「年代別シミュレーション記事」を読む際は、以下のスタンスでご覧ください。
- 細かい数字に突っ込まない: 「うちはインターネット無料だから」「米はふるさと納税だから」といった個別の事情(ノイズ)はいったん無視してください。
- 増加額のイメージを持つ: 今の生活費がどれくらい増えていくのか。教育費の桁がいつ変わるのか。その衝撃の大きさを予習してください。
上記のイメージが持てたら、その予測に合わせて、今からどうやって教育資金を準備していくべきか、やっと具体的に考えることができるようになります。
ブラックボックスを開けるのは今
子供が小さいうち(0〜6歳)なら、まだ間に合います。 この記事を読んだ今日が、夫婦で「お金会議」を開き、お互いのブラックボックスを少しだけ開示するベストタイミングかもしれません。
「相手が貯めているはず」という幻想を捨て、現実の数字と向き合う準備はできましたか?
それでは、次回の記事からいよいよ、年齢別のリアルなコスト明細を見ていきましょう。まずは、人生唯一のボーナスタイムと呼ばれる「0〜6歳編」からです。


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