夫(コーヒーを飲みながら):
「よし、これで新NISAの設定も終わったし、教育資金の準備はバッチリだな。…でもさ、ふと素朴な疑問なんだけど。」
妻:「なに?」
夫:「なんで**『オルカン(全世界株式)』なんだろう? 米国株とか、インド株とか、もっと儲かりそうなやつもあるのに。なんでFPの人は口を揃えて『黙ってオルカンを買え』って言うのかな?」
妻(ニヤリとして):
「いい質問だね。それはね、オルカンを買うことが、『資本主義そのものを買う』ことに等しいからよ。」
夫:「資本主義を買う…? また話がデカくなったな。」
妻:「ふふ、これだけは知っておいて。私たちがこれから15年以上、何があっても積立をやめないための『理論的なお守り』**の話をするわ。」
本サイトでは、これまで新NISAを使った具体的な教育資金の作り方を解説してきました。
今回は、少し視点を変えて、**「そもそも、なぜ私たちは投資をしなければならないのか?」「なぜ、オルカンが正解なのか?」**という根本的な問いについて考えます。
その答えを導き出す鍵は、現代最高の経済学者トマ・ピケティが証明した**「 $r > g$ 」**という数式にあります。
これは単なる経済理論ではありません。あなたが資本主義社会で生き残るための、唯一の地図です。
目次
- ピケティの功績:「格差」を「物理法則」として証明した
- r > g の正体:労働者(g)は資本家(r)に絶対に勝てない
- なぜ「オルカン」なのか?それは「地球まるごと」の 「r」 を手に入れること
- 最後に:この「理論」を、15年間の心の支えにせよ
1. ピケティの功績:「格差」を「物理法則」として証明した
「お金持ちはますますお金持ちになり、貧乏人はいつまでも貧乏なままである」
このような感覚は、誰もがなんとなく持っていました。しかし、それはあくまで「感覚」に過ぎませんでした。
トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』が世界中に衝撃を与えた理由は、彼がこの残酷な事実を、過去200年以上、20カ国以上にわたる膨大な税務データや遺産記録を掘り起こし、客観的な数字として証明してしまったからです。
彼は、フランス革命以前のボロボロの記録まで遡り、執念深くデータを分析しました。その結果、戦争や恐慌などの一時的な例外を除き、人類の歴史において常に成立していた「ある不等式」を発見しました。
それが、r > g です。
彼は、「資本主義が発展すれば、いずれ富は分配される(トリクルダウン)」という希望的観測を、**「いや、歴史上そんなことは一度も起きなかったし、今後も起きない」**とデータで完全に否定したのです。
2. r > g の正体:労働者(g)は資本家(r)に絶対に勝てない
この数式が意味するものは極めてシンプルです。
- g(Growth):経済成長率(=あなたの給料の上昇率)
- 私たちが汗水垂らして働き、経済を成長させるスピード。歴史的に年1〜2%程度。
- r(Return):資本収益率(=投資による利回り)
- 株や不動産などの資産が、勝手に増えていくスピード。歴史的に年4〜5%程度。

結論: 「r(お金が増える速度)」は、「g(給料が増える速度)」よりも常に速い。
例えるなら、「労働者(g)」は必死に走るランナーですが、「資本家(r)」はエスカレーターに乗っています。
どれだけランナーが努力して走っても、エスカレーターの速度には勝てません。時間が経てば経つほど、両者の差は絶望的なまでに開いていきます。
これが、私たちが「労働だけ」では豊かになれない、数学的な証明です。
3. なぜ「オルカン」なのか?それは「地球まるごと」の r を手に入れること
では、私たち一般庶民はどうすればいいのでしょうか?
答えは一つ。私たちも**「エスカレーター(r)」に片足を乗せる**しかありません。
ここで重要になるのが、**「なぜ特定の株ではなく、オルカンなのか?」**という問いです。
特定の企業(例:今のApple)や、特定の国(例:今の米国)に投資をすることは、確かに高いリターンを生むかもしれませんが、没落するリスクも伴います。
しかし、**「全世界株式(オルカン)」**はどうでしょうか。
オルカンを買うということは、**「地球上の資本主義市場全体」**を買うことを意味します。

世界中の企業が生み出す利益、世界中の工場、世界中のイノベーション。これら全てから得られる「資本収益(r)」を、まるごと平均点として受け取る権利を買うことになります。
ピケティが証明した通り、人類の歴史において資本収益(r)は成長し続けてきました。
オルカンを持つということは、「資本主義というシステムそのもの」に、あなたの財布を接続することなのです。
4. 最後に:この「理論」を、15年間の心の支えにせよ
これから15年、教育資金を作る過程で、必ず「暴落」が訪れます。
ニュースは不安を煽り、株価は半分になり、「もう資本主義は終わりだ」と叫ばれる日が来るでしょう。
その時、この**「r > g」**を思い出してください。
- 200年前から、戦争があろうが疫病があろうが、結局 r は g を上回り続けてきた。
- 自分は今、オルカンを通じて、その強靭な「資本の側」に立っている。
この確信さえあれば、一時的なマイナスに動じることなく、静かに積立を続けることができるはずです。
新NISAとオルカンは、あなたが子供たちのために用意できる、**「資本家側への片道切符」**なのです。
まとめ
- 感覚ではなく事実: ピケティは200年のデータで「労働だけでは勝てない」ことを物理法則のように証明した。
- r > g の意味: 資産が増えるスピードは、給料が増えるスピードより常に速い。
- オルカンの真価: オルカンとは、世界平均の「r」を最も確実に手に入れるための装置である。
- 最終結論: 労働(g)を続けながら、資本(r)を持つ「ハイブリッド戦略」こそが、現代の最適解である。

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