「老後が不安だ、年金だけじゃ暮らせない」 そう言われて久しい日本ですが、実は多くの高齢者が「お金を使いきれずに、多額の遺産を残して亡くなっている」という事実をご存知でしょうか?
なんとなく不安だからと倹約を続け、旅行も外食も我慢し、気づけば定年後の口座には数千万円の残高。 数字だけ見れば勝ち組に見えるかもしれません。しかし、その通帳を眺める本人の心にあるのは、達成感ではなく虚しさであることが多いのです。
この記事では、日本で非常に良くあるケース「死ぬ時に一番金持ちになってしまう悲劇(人生の損失)」について考えます。
日本人は火葬場で一番お金持ちになる
あなたは、人生で一番お金持ちになるのはいつだと思いますか? バリバリ稼いでいる50代? それとも退職金が入った60代?
金融老年学のデータによると、多くの日本人は死亡する直前が人生で最も資産を持っている状態だと言われています。 「老後が不安だ」という呪縛にかかり、死ぬ間際までお金を使わず、年金の中で慎ましく暮らし、資産を減らさないように努力した結果です(もし、その不安が「老人ホーム代」などの誤解から来ているなら、それは以下の記事で解説した通り幻想です。過度な恐怖は捨ててください)。

その結果、使いきれないほどの数千万円を残して旅立ちます。 「子供に残せるからいいじゃないか」と思うかもしれませんが、それは本当に最高の人生だったと言えるのでしょうか?
ここで、モデル夫婦として、今の日本中で非常に多いケースとして挙げられる、以下の事例で考えてみましょう。
【モデル夫婦】
夫が定年退職後、退職金も合わせたら、純資産が5,000万円超え。現役時代、老後破綻に怯えて、ハワイ旅行も車の買い替えも我慢して貯金してきた成果で、非常に余裕のある老後生活が内定。
その資産は「何をしなかった」お金か?

不安に駆られて貯め込んだ5,000万円。 もちろん、介護費用などの「安全資産(1,000〜2,000万円)」は心の平安のためにも準備しておいて良いかもしれません。ただ、それを遥かに超える「過剰な3,000万円」について考えてみてください。
そのお金は、本来なら何に変わるはずだったのでしょうか?
- 30代の時、子供と一緒に見たはずのハワイの夕日
- 40代の時、妻にプレゼントできたはずの素敵な指輪
- 50代の時、友人と語り合えたはずの美味しい料理とお酒
これら二度と戻らない時間と経験をすべて我慢して、銀行口座に数字として積み上げた結果が、その過剰な資産なのです。 そう考えると、その通帳の数字は成功の証というよりも、使い切れなかった後悔の塊に見えてきませんか?
「思い出」は複利で増える最強の資産

世界株インデックス(オルカン)などで資産を増やすのも大切ですが、人生においては思い出の配当利回りの方が遥かに大切です。
例えば、今、無理をしてでも家族旅行に行ったとします。 そこで撮った写真、起きたハプニング、子供の笑顔。その思い出は、その後40年、50年と、家族が集まるたびに「あの時、楽しかったね」と語り合われ、そのたびに家族に幸福感という配当を生み出し続けます。
お金には賞味期限がある
ベストセラー書籍『DIE WITH ZERO』でも語られていますが、お金には明確に賞味期限があります。
冒頭のモデル夫婦のように、「お金は老後にとっておいて、時間ができたら旅行に行こう」と考えるのは危険です。 60代、70代になった時、お金と時間はあっても、健康と子供がいません。
子供は独立して親とは遊んでくれませんし、自分たちの足腰も弱って、若い頃のようにアクティブに動くことも難しくなっているでしょう。「思い出への投資」には、旬(投資適齢期)があります。 それが、子供がまだ親を求めてくれる、そして自分たちが健康な今なのです。
子供への最高の遺産は「お金」ではなく「経験」
「でも、お金を残してあげれば子供が楽できる」と思う親心もわかります。 しかし、子供が遺産を受け取るのは、親が亡くなる時。つまり子供自身も50代、60代になっている頃です。 もう自分でお金を稼いでいる年齢になってから大金を渡されても、若いうちほど嬉しくはありません。
むしろ、本当に子供のためを思うなら、お金そのものではなく、「生きる力(人的資本)」を残すべきです。
- 色々な場所に旅行して、広い世界を見せてあげる
- 好きな習い事をさせて、特技や自信を持たせてあげる
- 理系の大学に行かせて、稼げるスキルを身につけさせてあげる
これらは、泥棒にも盗まれない、相続税もかからない、子供自身の一生の財産になります。 使いきれない現金を残すよりも、そのお金を今の子供の経験に投資してあげる。 それこそが、教育資金デザインラボが考える最高の相続です。
今の幸福を最大化するために、定期的なメンテナンスを
もちろん、「宵越しの金は持たない」とか「資産ゼロで死ね」と言って、無計画な浪費を推奨しているわけではありません。 将来への備えは絶対に必要です。しかし、不安だからという理由だけで、思考停止で貯め込みすぎるのが危険なのです。
だからこそ必要なのが、ライフプランの定期的な見直しです。
30代で作った計画が、50代でも通用するとは限りません。 給料の増減、物価の上昇、子供の進路変更(公立→私立)、親の介護…。家計の状況は、年月と共に必ず変化します。
「過剰な備え」を「今の幸せ」に変換する作業
定期的に見直しをすることで、はじめて今の家族の幸せと将来の安心のバランスが取れるようになります。
- 「資産運用が順調だから、将来の目標額は達成できそうだ。よし、今年は少し贅沢して家族旅行に行こう」
- 「教育費のピークが過ぎたから、余った予算で夫婦の趣味にお金を使おう」
このように、定期的なメンテナンスを行うことで、過剰な貯蓄(死蔵されるお金)になる前に、生きたお金として今の幸福に使うことができるのです。闇雲に貯めるのではなく、「ここまで貯まればOK、あとは使ってよし」というラインを常に確認し続けることが、後悔しない人生への唯一の近道です。
結論:「死ぬ時が一番金持ち」を目指すな
30代・40代の皆さんに伝えたいことは一つです。 将来の漠然とした不安におびえて、冒頭の夫婦のように「お金はあるけど思い出がない」という状態にならないでください。
- 介護・安心用として、適正な資産は確保するように努める。
- それ以上の過剰な備えは、今の子供との時間や経験に投資する。
- そのバランスを見極めるために、定期的にプランを見直す。
未来の安心も確保しながら、今の家族との思い出も最大化する。 そんないいとこ取りの人生を目指して、賢くお金を使っていきましょう。
ここまで、数字の嘘を暴き、老後のマインドブロックを解説してきました。 漠然とした不安はもう消えたはずです。最後に、これまでの知識を総動員して、「老後不安をゼロにして、教育費に全振りするための完全攻略法」を完成させましょう。 次の記事で、教育資金デザインラボが導き出した「結論」を詳しく解説します。

コメント